水田宗子さんの経歴・研究業績

水田宗子(1937--)

比較文学者、詩人、教育者、大学経営者

1937年 東京市大森区に父水田三喜男、母清子の次女として生まれる。(本籍地は千葉県鴨川市西)

1942年 疎開先の千葉県安房郡勝山町勝山小学校に入学、館山市北条小学校、東京都千代田区雙葉学園小学校、中学、高等学校卒業後、東京女子大学文理学部英米文学科へ入学。1960年卒業、東京都立大学大学院(修士課程)、米国イエール大学修士課程、博士課程にて修士号、博士号取得(MA, Ph.D. American Studies 1970) 

父水田三喜男(1905-1976)は1946年新憲法下最初の総選挙に当選し衆議院議員となり、自民党政調会長、経済企画庁長官、通産大臣、大蔵大臣を歴任し、戦後の日本社会、経済、教育の復興に尽力した政治家で、1965年学校法人城西大学を創立し、初代理事長学長。母清子(旧性町田)は句集五冊を持つ俳人、富安風生、岡本眸に師事、東金俳句会主宰。城西川越高校理事長、学校法人城西大学二代理事長(1976-2005)。

水田宗子は学生時代から詩作、批評活動を続け、1961年米国イエール大学院へ留学、1983年まで米国の大学、大学院で、近・現代英米文学、批評理論、日欧米比較文学、フェミニズム批評、女性学、ジェンダー論などを24年間にわたり幅広く講義、その間、日本女性文学の翻訳を刊行し、海外の日本文学研究者を多数育成した。1983年帰国後、城西大学女子短期学部開設、1992年城西国際大学を創設し、城西大学、城西国際大学で教授、学長、学校法人城西大学専務理事、常務理事を務め、2005年3人目の学校法人城西大学理事長に就任、2017年に退職するまで33年間,大学経営者、教育者として尽力し、城西大学、城西国際大学を国内外で、経営的にも、グローバル教育、ジェンダー・女性学教育の先駆的教育機関としても高く評価されるまでに発展させた。

女性人材育成教育・国際的研究者育成のため、水田宗子奨学金制度・女性リーダー育成奨学生制度を発足し、留学生の受け入れや大学院でのグローバル女性人材育成に取り組む。奨学生たちは現在国内外、世界各地で活躍している。グローバル人材育成を目指して、26ヵ国、129を超える海外の大学、研究所と協力提携を結び、学生の留学制度の拡充、英語で授業をするグローバル・カレッジを設立して、海外の研究者、留学生との協力を推進した。日本初のフェミニズム批評、ジェンダー批評、女性学の大学院修士課程、博士課程を創設し、中国大連理工大学を中心に日中連携大学博士課程を開設して多くの博士号取得者を育成して、国際人材の育成に貢献した。また千葉県東金市、鴨川市をはじめとする千葉県地域社会と緊密に連携し、福祉、看護、介護、観光、環境社会学、薬学部を設立し、女性学教育プログラムと連動させて、積極的に医療系学生の海外研修を推進した。

研究者、教授としては、『ヒロインからヒーローへ』『フェミニズムの彼方』『物語と反物語の風景『20世紀女性表現』をはじめとするフェミニズム文学批評の古典的な著書、日本女性誌人、作家の作品の翻訳を通して、日本におけるフェミズム批評の先駆者であると同時に、海外の日本女性文学の研究者の育成に尽力した。『フェミニスト』、英文ジャーナル『Review of Japanese Culture and Society』『US/Japan Women’s Journal}を編集し、現在はThe Journal of Comparative Media and Women’s Studies を編集し、国際メデイア。女性文化研究所所長として研究・批評活動を続けている。

詩人としては十二冊の詩集は英語、中國語、韓国語、スウエーデン語、ハンガリー語ほかに翻訳され、スウエーデンから国際詩賞「チカダ賞」を受賞している。詩誌『カリヨン通り』主宰、国際短詩協会創設。

城西国際大学に国際現代詩センターを設置し、北京大学に城西大学国際現代詩センターを開設し、国際短詩協会、留学生「帰路賞」(日本語詩賞)を創設、第一回の授賞式を2017年1月に催行した。

2017年 城西大学退職後は一般社団法人「国際メディア、女性文化研究所」を開設し、世界的規模でメデイア・女性文化研究を発展させている。機関誌『比較メディア女性文化研究』をはじめ『日米女性ジャーナル』(ハワイ大学評価機構からA評価)、詩と批評の同人誌『カリヨン通り』を刊行し、日本語と英語で発信し、国境を超えたメデイア、ジェンダー・女性学批評、現代詩、人文研究の拠点となっている。

【教育】

1960 東京女子大学人文学部英米文学科卒業BA

1960-61 東京都立大学大学院英米文学専攻修士課程

1960 米国Yale University Graduate School修士号(M.A.)

1970 Yale University Graduate School, American Studies博士号(Ph.D.)

職歴 Work Career

1967年4月 助教授Assistant Professor, Associate Professor 獨協大学Dokkyo

        University

1970年9月 助教授メリーマウント大学英文学部Assistant Professor, Dept. of English,

        Marymount College, Tarrytown, NY (USA)

(Courses taught: American Literature, Modern British and American

Literature, Theories of Literature, Theories of Criticism)

1971年9月 助教授スクリップス大学英文学部Assistant Professor, Dept. of English,

        Scripps College, Claremont, C A(USA)

(Courses taught: American Literature, Modern British and American

Literature, Comparative Literature, Theories of Literary Criticism)

1972年4月 城西大学経済学部助教授

1974年9月 准教授南カリフォルニア大学比較文学、東アジア言語文学学部Associate Professor, Univ. of Southern California, Los Angeles, CA (USA)

(Courses taught: Comparative Literature, American Literature, Theories of Criticism, Romanticism, Theories of the Novel, Japanese Literature, Theories of Japanese Culture, World Literature, Women’s Studies, Graduate Seminars in Comparative Literature, Graduate Seminar in Women’s Studies)

1977年     同大学テニュア取得

1996-2004 学校法人城西大学,城西大学女子短期大学英文学部教授、

        法人専務理事、常務理事

1992-2017 城西国際大学人文学部教授Josai International University Professor, Faculty of Humanities

194-1996   城西大学学長

1996-2009 城西国際大学学長Josai International University President

2005-2016 学校法人城西大学理事長Josai University Educational Corporation Chancellor

2017-present 一般社団法人国際メディア、女性文化研究所理事長、所長International Institute of Media and Women’s Studies-Chancellor and Director

Honors

May, 2011 The Pro Cultura Hungarica Prize, the Hungarian Governmentハンガリー共和国文化勲章ハンガリー政府

Nov. 2013 Commander’s Cross of the Order of Merit of Hungary (Civil List) the Hungarian Governmentハンガリー共和国より十字勲章ハンガリー政府

Dec. 2013 Cikada Prize for Poetry,「チカダ」賞(生命の尊厳を表現する詩人に授与)presented by the Embassy of Sweden

June 2018 The Order of the Polar Star, presented by HM King Carl XVI Gustav, the King of Sweden、(北極星勲章)民間人最高の勲一等授賞。カール・グスタフ16世スウェーデン国王

Honorary Titles

Dec. 2007 中国華南師範大学名誉教授China: South China Normal University: Professor Honoris Causa

Sept. 2010 韓国東西大学名誉博士Korea: Dongseo University: Doctor Honoris Causa

Sept. 2012 China: Northeastern University: Professor Honoris Causa

Nov. 2013 ハンガリーHungary: Szent Istvan University: 名誉博士Doctor Honoris Causa

June 2015 マレーシアMalaysia: University of Malaysia, Perlis, Doctor Honoris Causa presented by the Raja and Queen of Perlis State, Malaysia名誉博士

August 2015 韓国韓南大学名誉博士Korea: Hannam University: Honorary Doctoral Degree

April 2014 Hong Kong City University 名誉教授

May 2016 China: 大連外国語大学名誉教授Dalian University of Foreign Languages 名誉教授、named Dr. Mizuta Special Overseas Chancellor

May 2016 USA: Awarded the University of California at Riverside Medallion

April, 2018 China: 武漢大学 終身女性大学長賞受賞

Oct. 2018 China: 深圳市文化芸術連合第一朗読者2018成就賞awarded to Dr. Noriko Mizuta

June,2019 Oxford University Special Seminar in Honor of Dr. Noriko Mizuta’s Works,

April 2022 Yale University, John Hall Lecture

【研究書、評論・エッセイ】

『鏡の中の錯乱:シルヴィア・プラスの詩』静地社1979

『エドガー・アラン・ポオの世界―罪と夢』南雲堂書店1982

『Reality and Fiction in Modern Japanese Literature 』M.E.Sharpe 1980

『エドガー・アラン・ポオの世界;罪と夢』南雲堂1982

『ヒロインからヒーローへー女性の自我と表現』田畑書店1982(中国語訳『女性的自我与表現:現代女性文学的歴程』、叶    中国文 出版社1999)

『フェミニズムの彼方』講談社1983

『物語と反物語の風景』田畑書店1985

『二十世紀の女性表現:ジェンダーの外部へ』学芸書林1987

『居場所考―家族のゆくえ』エッセイ集、フェミックス1998

『ことばが紡ぐ羽衣:女たちの旅の物語』エッセイ集思潮社1998

『山姥たちの物語』編著北田幸恵学芸書林2002年

『女性学との出会い』集英社新書2004

『尾崎翠「第七官界彷徨」の世界』新典社2005年 (英語訳)(Translated by Jennifer Cullen and Wachi Yasuko)

『開学百年への道:城西大学、城西国際大学の歩み(1)』学校法人城西大学国際学術文化振興センター, 2008年

『高麗川の流れのほとりにて』埼玉新聞社2010(中国語訳)姜寅星、李 清、西北大学出版社2012

『大庭みな子―記憶の文学』平凡社2013

『モダニズムと〈戦後女性詩〉の展開』思潮社2012年(中国語訳)王新新新、北京大学出版

『奪われた学園』幻冬舎2018年

『詩の魅力 / 詩の領域』思潮社2020年

『富岡多恵子―はぐれものの思想と表現』編著、めるくまーる2021年

『白石かずこの世界:性・旅・命』書肆山田2021年

詩集、童話

『春の終わりに』八坂書房1976

『幕間』八坂書房1980

『炎える琥珀』大庭みな子との往復詩、中央公論社1996

『帰路』思潮社2008 (Roard Home, translated by Jordan Smith,2015,『帰路』陳岩訳(大連理工大学出版会)、韓国語李英和訳、その他)

『サンタバーバラの夏休み』思潮社2010

『アムステルダムの結婚式』思潮社2013

『青い藻の海』思潮社2013 (The Sea of Alges, trans. Jordan Smith, Josai University Press)

『東京のサバス』思潮社2015 (Sabbath in Tokyo, trans. Jordan Smith)

『水田宗子詩集』思潮社2016

『影と花と』思潮社2017

『Mizuta Noriko: Berghaxans drom(「水田宗子山姥の夢」」Lars Vargo、Bokforlaget,Stockholm,Sweden2020

『うさぎのいる庭』ポエムピース2020 (中国語訳 田原)

『音波』思潮社2021

『ぼくと2まい葉』絵小原風子、文水田宗子、ポエムピース2017

『Poem in Blue, 藍之詩』水田宗子の詩日本語・英語・中国語対訳、北島監修、香港中文大学出版社201その他日本語、各国語訳有:英語、ドイツ語、フランス御、スウェーデン語、ノルウェー語、ハンガリー語、韓国語、中国語、ポーランド語、スロベニア語、チェコ語などに翻訳されている)

翻訳

シルヴィア・プラス『鏡の中の錯乱』静地社1979

アン・セックストン『魔女の語るグリム童話替え話』静地社1980

Japanese Woman Writers, edited and translated with Kyoko Selden, M.E. Sharpe 1982

『フェミニスト映画:性幻想と映像表』水田宗子訳、序文解説、田畑書店1985 (E.A.Kaplan, Women and Film: Both Sides of Camera, Methuen 1983

『フィルム・ノワールの女たち:性的支配をめぐる争闘』田畑書店1988(Women in Film Noir, edited by E.A. Kaplan, British Film Institute1980

More Stories by Japanese Women Writers: An Anthology edited and translated with Kyoko Selden, M.E. Sharpe 2010

The Funeral of a Giraffe: Seven Stories by Tomioka Taeko, translated with Kyoko Selden2000

『ルーブル美術館の不思議な日曜日』白石かずこ、水田宗子訳 学校法人城西大学出版2017(絵と文Isabelle Duchesnes, Derole de Dimanche au Louvre, Editions Infime2015)

編著、編共著

『Leaving the Yellow House by Saul Below』, 水田宗子編集、解説、南雲堂1972

Japanese Women Writers, edited and translated with Kyoko Selden, M.E. Sharpe 1982

『危機と均衡:国際摩擦と日本経済』水田宗子責任編集,城西大学国際文化教育センター1988

『女性と家族の変容:ポストファミリーへ向けて』水田宗子編,学陽書房1990

『女性の自己表現』水田宗子編、第二回環太平洋女性学会議,田畑書店1993

『母と娘のフェミニズム:近代家族を超えて』水田宗子、北田幸恵、長谷川啓編、田畑書店1996

『うたの響き・物語の欲望―アメリカから読む日本文学』(共著)関根英二編、森話社1996

『女性と表現―フェミニズム批評の現在』New Feminism Review Vol 2 水田宗子編、学陽書房1991

『ジェンダー白書3:女性とメディア』(共著)北九州市男女共同参画センター“ムーブ”編、明石書店2005

『韓流:サブカルチャーと女性』水田宗子、北田幸恵、長谷川啓編共著、至文堂2006

『ジェンダーで読む韓流文化の現在』編共著、城西国際大学ジェンダー_女性学研究所水田宗子編、現代書館2006

『輝く21世紀を拓く:少子高齢化、地方自治、仕事、医療、福祉』水田宗子編、新宿書房

『新天地:四行連詩集 I』水田宗子編共著、[カリヨン通りの会],城西国際大学出版会2011[

『生命の尊厳を表現するということ:Cikada Pricet Sweden 2013水田宗子編共著、学校法人城西大学出版会2015

『外地と表現』編共著、城西国際大学比較文化講座「ジェンダー論」講演集、学校法人城西大学出版会2015

『Poetry and Outer Territorie: Poetry among East Asian Poets, edited by Mizuta Noriko, Jordan Smith, Romain Duchesnes, Josai University Press2016

『詩と幼年時代』国際現代詩シンポジューム、城西現代詩センター所長水田宗子編共著2016

『屋根に残った破れ靴―日中韓詩人の集い』水田宗子編共著学校法人城西大学出版会2016

『荒ぶるゆりかご:3・11の惨事への詩的な応答』水田宗子編学校法人城西大学出版会2018

「21世紀に求められる人文科学と大学教育――大学改革と人間」水田宗子編、一般社団法人国際メディア・女性文化研究所2018

『(新編)日本近代女性文学全集Vol.10』水田宗子編集、監修長谷川啓、岩淵宏子、六花出版2019

『現代女性文学を読む: 山姥たちのかたり/ジェンダー・フェミニズム批評の現在』水田宗子、北田幸恵、長谷川啓、小林富久子編共著、アーツアンドクラフツ、2016

『故郷:四行連詩集I I 』水田宗子編共著「カリヨン通りの会」一般社団法人国際メディア・女性文化研究所2021

共著

{フェミニズム入門}(共著)、冨士谷あつ子1978

『フェミニズム批評への招待:近代女性文学を読む』(共著)岩淵宏子、北田幸恵、高良留美子編、学芸書林1995

The Woman’s Hand : Gender and Theory in Japanese Women’s Writings, edited by Paul Schalow and Janet Walker, Stanford University Press 1996(共著)

『セクシュアリティの社会学』(共著)岩波講座現代社会学、吉見俊哉、見田宗介、大澤眞幸、上野千鶴子、井上俊編、岩波書店1996

Poe Abroad, edited by Lois Davis Vines, University of Iowa Press1999(共著)

『高橋たか子の風景』(共著)、中川成美、長谷川啓編、彩流社1999

『買売春と日本文学』(共著)、岡野幸江、長谷川啓編、東京堂出版2002

『老いの愉楽―老人文学の魅力』(共著)、尾形明子、長谷川啓編、東京堂出版2008

『Feminism in Japan 新編日本のフェミニズムIIフェミニズム文学批評』({共著)上野千鶴子ほか編 岩波書店2009.

『New Feminism Review, Vol.IIフェミニズム文学批評』責任編集、

『日本近・現代女性文学全集』北田幸恵、岩淵宏子、長谷川啓編集、水田宗子11巻編集、共著、アーツアンドクラフツ2018

Yamamba-In Search of Japanese Mountain Witch, edited by Rebecca Copeland, Stone Bridge Press,2021(共著)

『田村俊子全集10巻』(共著)ゆまに書房、2023

対談集

『山姥のいる風景』―大庭みな子、水田宗子対談, 田畑書店1995

『文学批評:女性と表現―女性作家たちと語る:対談、鼎談、シンポジューム』北田幸恵編、学校法人出版会2014

『家父長制とジェンダー:対談、鼎談、シンポジューム』北田幸恵、水田宗子編、学校法人城西大学出版会2014

『ジェンダーとアジア:対談、鼎談、シンポジューム』北田幸恵、水田宗子、学校法人城西大学出版会2016

ジャーナル、雑誌編集

『フェミニストー新しい女たちの「青鞜」』(共編)渥美育子、水田宗子他編集、1976-1990

『RIM』城西国際大学ジェンダー・女性学研究所機関誌編集責任1996-2017

Review of Japanese Culture and Society1986-2021 Editor in Chief

US/Japan Women’s Journal, Editor Sally Hastings and Mizuta Noriko編集

The Journal of Comparative Media and Women’s Studies編集責任担当、編集員和智綏子、北田幸恵、岩淵宏子、小林富久子

小野理事に対する名誉毀損訴訟上告審の結果のお知らせ

 平成28年11月30日の学校法人城西大学理事会における小野理事の発言が水田宗子先生に対する名誉毀損や侮辱に当たるかどうかに関し、水田宗子先生が小野理事に対して提起していた損害賠償請求訴訟について、平成30年9月12日に下された一審判決は既報の通り水田宗子先生の請求を認めました。しかし、平成31年控訴審判決は一転して小野理事の主張を認め、水田宗子先生の請求を棄却してしまいました。

 控訴審では、小野理事側は、上記理事会での小野理事の発言は事実に基づいている旨の主張を行いました。しかしこの主張は、一審判決において、時機に後れた主張・立証であるとして、小野理事側の主張・立証を許さないと決定されたものでした。そのため、水田宗子先生側は、小野理事の主張は許されない旨指摘し、結審しましたが、控訴審判決は、小野理事の主張を取り上げて判断したものでした。

 水田宗子先生側は、小野理事側の主張が真実に反することを主張・立証をすることがないまま控訴審判決が下されてしまったため、最高裁に上告しておりましたが、令和元年9月3日付けで水田宗子先生の上告は認められませんでした。最高裁は法律審であり、控訴審の事実認定の問題については取り上げないことものであるため、制度上やむを得ないものと考えられます。

 本件は意外な訴訟進行により極めて残念な結果となりましたが、小野理事側の不当な行為に関しては現在4件の裁判が東京地裁に係属しており、そこでは水田宗子先生の主張が認められるものと確信しております。

 皆様には引き続きのご支援をいただきたく、よろしくお願いいたします。


                                                                                                    令和元年9月5日

                                                                            城西大学の建学の精神を支える会

                                                                                        有志





城西大学の異常事態の解消のために

1.   9月12日の東京地裁の判決で、水田前理事長の解任動議を主導した小野理事の理事会での発言が、違法な侮辱にあたるとして賠償命令が下された。今後控訴審なども予想されるが、厳格な証拠調べを経た一審判決で賠償命令が下された事実は重い。民間企業や公務員の世界では、このような事態になれば、起訴や一審の判決が出た段階で直ちに責任者の進退が問われることになるのが通常である(自ら職を辞する者も多い)。

2.   この裁判では、理事会という非公開の場で行われたとの理由で、水田氏の名誉毀損が認められなかったが、理事会での異常事態は翌日から学内外に漏れ始め、2月後半からは小野理事や北村事務局長が守秘義務を課された身分でありながら学外に直接説明をはじめる等、4月の大学側発表もあって、水田氏を貶める情報はネットなどでも拡散し、学内外が知る公然の情報となっていった経緯があると聞く。このような事実は明らかであり、原告側が控訴すれば名誉棄損の成立が認められることも十分にあり得ると予想される。

3.   いずれにせよ、文部科学省(以下「文科省」)の学校運営調査が継続中であった時点において、当該調査の結果大学に不利益が及ぼされる蓋然性が高いことを懸念して、文科省OBである小野理事によりなされた水田氏解任の緊急動議である。これが、文科省OBと現役が連携した「官製クーデター」(水田氏の著書「奪われた学園」の帯に出版社が付した言葉)であることは否定できない事実であろう(出版記念会での発起人も挨拶で同様の指摘をされた)。 

小野理事はその後、理事長不在の10か月もの期間を、寄附行為の規定に基づかず、「理事長代理」という職に自ら立候補して就任し、また上原明理事長就任後には寄附行為上規定されていない「理事長特別補佐」なる役職を名乗り、実質的に理事長としての最高権力を振い続けている。

また、今回敗訴した小野理事個人が被告となっている民事訴訟の弁護士費用を、「個人が訴えられたにもかかわらず」大学に負担させる「公私混同」の行為も続けている(マスコミ取材に本人が認めている)。

4.   小野氏・北村氏など大学側の最大の主張である前理事長の「不適切な支出」も、理事会ないし常務理事会の議決を経た名誉理事長水田清子氏への退職金や功労金の支払い、前理事長の水田宗子氏への退職金の支払い、米国姉妹校への打合せを兼ねた夏季の出張等を問題視したものだが、本人がこれを完全否定する中、一方的に独立性に疑問のある会計調査委員会なるものを設け、水田氏本人に十分な反論の機会も与えないまま、結論ありきのヒアリングを進める等、非常に疑義が持たれるものである。今後訴訟で争われることになれば、これらの主張も根拠を失うことが十分に予想される。

5.   小野氏・北村氏などは、上記クーデター直後から、大学の異常事態に異を唱えた、理事、監事、評議員、教職員を次々と排除してきた。今年に入って、突然の雇止め通告を受けた客員教授ら数人が、労働組合東京ユニオンに加盟して支部を結成し大学側と団交を始めたが、大学側は責任者が出席しない等極めて不誠実な対応を繰り返してきた。最近に至り、東京都労働委員会は「不当労働行為」の疑いを認めて和解を勧告、現在大学側による雇止めの完全撤回に向けた交渉が続いている由であるが、教職員のみならず学生(留学生)を巻き込んで学内の不安と混乱を拡大させている。

6.   以上のような、大学の異常事態は、教職員、学生、父母、外部協力団体等にも、マスコミ報道を通じて伝わり始めており、学内外関係者の不安や混乱に加え、学生募集への影響も心配される状況にある。(国は私立学校に直接介入できない(しない)という建前の密室環境の中で、文科省OBの権威を笠に着たトップの恐怖政治が学内でまかり通る結果を生じ、学内ではその権威に阿る教職員が管理ポストにいる中で、リスクを冒して声をあげる者が少ないのは極めて残念なことである。)

7.   大学の最高経営責任者である上原明理事長(大正製薬会長)には、このような異常事態を深刻に受け止め、大学運営の正常化を図るとともに、創業者水田三喜男氏以来の建学の精神の維持(それも形式ではなく実質に於いて)を如何に全うするか、真剣に考えて頂くタイミングであると考える。

平成30年10月2日

城西大学の建学の精神を支える会

 有志




裁判(9/12判決)の概要と弁護士のコメント

1、事件の概要 (平成29年(ワ)第9119号 損害賠償請求事件)

学校法人城西大学の理事長であった原告水田宗子は、本件学校法人の理事会(平成28年11月30日)において、被告小野元之によって、理事長解任の緊急動議の提出とともに、原告があたかも認知症に罹患し、学校法人内でパワハラ、セクハラをしたり、人事権を濫用していたり、業務上横領しているなどの発言をされ、原告の名誉が毀損され、また、侮辱されたと主張して被告に対し、不法行為による損害の賠償として、慰謝料1000万円及び弁護士費用100万円並びにこられに対する上記発言のあった不法行為の日である平成28年11月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。


2、判決 (平成30年9月12日)

被告は原告に対し、55万円及びこれに対する平成28年11月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。原告のその余の請求を棄却する。訴訟費用は、これを100分し、その95を原告の、その余を被告の各負担とする。


3、大室俊三弁護士のコメント

 ご承知のことと思いますが、水田宗子先生と学校法人城西大学らとの間には、現在4件の訴訟が係属していますが、これら事件とは別に小野元之氏個人との間の訴訟につき、9月12日、判決が言い渡されました。

 この事件は、水田宗子先生を理事長から「解任」した平成28年11月30日の同大学理事会において、小野氏が解任動議の提出理由として述べた発言の違法性が論点となった訴訟です。

 水田先生は、小野氏の発言は水田先生の社会的評価を貶めプライドを不当に傷つける違法なものだとして、小野氏個人を被告として東京地裁に損害賠償の訴訟を提起しました。今回の判決で、裁判所(東京地裁民事大5部)は、小野氏の発言が理事会という密室の中でなされたとの理由で、社会的評価を貶めているとの点については当方の主張を認めませんでしたが(ただしこの判断には大いに問題があります)、水田先生のプライドを不当に傷つけているとの点は認め、小野氏の発言を違法であるとして同氏に対して55万円の支払いを命じました。

 理事会での小野氏の発言は常識的に見てひどいものだったことから、私は、自ら強いと公言されている小野氏の正義感が、どれほどのものか見てみようとの皮肉を込めて、証人尋問のなかで、理事会での発言は今でも一点の非もないと考えているのかとたずねました。これに対して小野氏は、自分は正しいことをいったのだと供述し、謝罪はおろか非を一切認めませんでした。このやりとりから明らかなように、この裁判は、小野氏の発言の正当性を巡って争われたものであり、小野氏の強弁にもかかわらず裁判所は小野氏の発言が違法であると断じたのです。

 小野氏のこの違法発言は、多くの理事の面前で行われたもので、この理事会に出席した理事たちは、面前で行われた違法行為の目撃者です。ところが、小野氏の発言をたしなめた理事や監事の先生方は全員その地位を失い、その余の理事たちは、小野氏の違法行為を制止せず却って小野氏を理事長代理にまで押し上げているのです。さらに、仄聞するところによれば、自らの違法行為の責任を問われたこの裁判のために小野氏が依頼した弁護士の報酬は、小野氏ではなく大学が負担しているようです。これについても小野氏以外の理事たちが承認しているのだとすると、一体この大学の理事たちの見識はどこにあるのか。正直あきれかえっています。




小野元之氏を被告として争った名誉棄損裁判(9月12日判決)について

水田宗子さんがコメントを発表しました


支援をしてくださる皆様へ

 小野元之氏に対する訴訟において、東京地方裁判所が人格権を侵害する不法な侮辱発言として小野氏に対して損害賠償を命じたことに安堵しております。小野氏の発言は、2016年11月30日の理事会において同氏が理事長解任動議の中で述べたものです。公共性の高い大学法人の公的な理事会の場での発言が人格侵害行為であると判断された意義は大きいと思います。

 今回の判断は、理事会決議もなく小野氏が恣意的に組織した会計調査委員会によるものではありません。国家機関である裁判所の判断です。そして、会計調査委員会での調査と異なり、小野氏に対して十分反論の機会が提供されたうえでの明確な違法判断です。その意味でも極めて大きな意義を有するものです。教育を司る文部科学省の事務次官経験者が、私立大学の理事会において現職理事長を解任するために、寄附行為上の手続を履践せず不意打ちの緊急動議を出し、その中で人格権侵害の侮辱行為を犯すなど、前代未聞だと思います。

 今回の判決を受け小野氏が真摯に反省されることを期待しておりましたが、学校のウェブサイトで同氏が発表した内容を見る限り、司法による違法判断を真摯に受け止める姿勢が全く見られず、大変残念です。それどころか、95%と5%という訴訟費用の負担割合について独自の解釈を開陳し、あたかも金額の多寡が判決の意義を決定するかのような印象を与えていることは、自身の発言を違法であるとした司法判断を矮小化する以外の何ものでもありません。

 特に小野氏は、小野氏の発言が「理事の正当な職務行為としてなされたものであり、しかも、その発言は、推測的、婉曲的、論評的であるので、不法行為としての名誉毀損行為にあたらない」との主張について、裁判所で「概ね」認められたと指摘していますが、この指摘は明らかに誤りです。

 判決は、小野氏の各発言が非公開を前提とする理事会の場でなされたこと、そして小野氏及びその関係者が各発言を伝播させたと認めるに足りる証拠がないことから、小野氏の各発言が「公然となされた」とは言えないため、名誉毀損が成立しないと判断したものです。小野氏の各発言が「推測的、婉曲的、論評的であり、そもそも名誉棄損的表現に当たらない」という主張は全て排斥され、ただ、その発言が公然とされたとまでは言えないというに過ぎません。ましてや、小野氏の各発言が理事の正当な職務行為であったとか、その発言が合理的根拠をもってなされたとするものではありません。小野氏の本判決の解釈はあまりに我田引水なものです。

 私が大変驚いたのは、小野氏個人を相手に訴訟を提起した訴訟にも関わらず、大学が敗訴判決に対する小野氏の独自の見解を大学のウェブサイトに公表させただけでなく、その独自の意見に大学が名を連ねたということです。判決内容を精査もしないかかる軽率な行為は、大学としての見識を疑わせるものです。前監事は、在職中、理事会における小野氏の発言が法令違反のおそれがあると強く指摘していました。しかし、小野氏及び小野氏に追従する理事はこれを一切無視し、小野氏の違法行為を指摘した元監事を再任しないという形で2017年3月末をもって大学を追い、小野氏の関係者、すなわち学校経理研究会の関係者(現在同研究会顧問)と元総務事務次官を監事として就任させました。そして、新任の監事は、前監事の意見を承知のうえで、2016年度の業務執行は適正に行われた旨の監査意見を出しています。

 しかし、小野氏の理事会における発言が人格権侵害を犯した違法なものであると裁判所が判断した以上、小野氏には理事として善管注意義務違反があったというべきです。また、前監事らの指摘を無視し続け、小野氏の行為について一切不問に付していた理事・監事らも同様に監督義務を怠った善管注意義務違反があったというべきだと思います。小野氏を除く現理事(その理事の中には元裁判官まで含まれています)及び監事は、民間の会計調査委員会による報告とはその重みが全く異なる今回の司法判断を尊重するものと思っていましたが、これを軽視し、一言の反省の言葉も公表されていないことに愕然としました。

 この訴訟は小野氏個人に対して提訴したものですが、小野氏は大学の費用で弁護団を形成し、職員を使い(法廷には大学職員が傍聴に訪れていたそうです)、教職員を招集して説明会を行い、その上に大学のホームページを用いて大学内外に自分の主張を広めています。小野氏は「デタラメ経営」であると非難した私が主導する経営の下ですら高額の理事報酬を得ていました。公的な理事会において人格権侵害である侮辱行為をし、訴訟となる事態を招きながら、それに責任を感じるどころか、十分な報酬を得た上その訴訟費用まで大学に負担させるような人物が現在、学校法人城西大学の理事長特別補佐なのです。

 もう一度申し上げます。今回の判決は、小野氏の組織した民間人が判断したものではなく、適正手続きを経た司法による判断です。小野氏は真摯に受け止め謝罪と反省をするべきだと考えます。少なくとも教育に携わる者、かつて元文科省事務次官として国家の教育行政に関わってきた人物が人格侵害の発言をしたことは率直に反省すべきことです。

 小野氏は、「学校法人城西大学における、相手方の何らかの地位が確認されたものではありませんし、相手方が理事長職を辞任したことについて、何らかの瑕疵が認められたものでもありません。」とも述べていますが、この判決は、①寄附行為の規定にない小野氏による緊急動議、②寄附行為の規定に基づかない小野氏の理事長代理就任、③理事長代理を自称する小野氏が理事会決議も経ずに組織した会計調査委員会の恣意的な調査結果に基づく理事解任(緊急)決議が、いずれも瑕疵のないものであると裁判所が認めたものでもありません。

 小野氏が主導して強引に作り出した現状に法律上の瑕疵がないことを裁判所が確認したものではありません。それは係属中の他の裁判の判決の中で判断されることです。

 法人局長北村幸久氏及び学校法人城西大学に対する名誉毀損訴訟、会計調査委員会の恣意的な判断に基づく理事解任(2017年9月)の無効確認を求める訴訟、小野氏による不当な排除行為に対する損害賠償請求訴訟等が係属中です。

 今回の判決は、そのような一連の違法行為の端緒となった理事会で、違法な侮辱行為が小野氏によって行われていたことを確認する重要な意義を有しています。

 なお、前述したとおり、理事会が守秘義務を有する理事によって構成される場であること、そして、発言が小野氏らによって外部に伝播した可能性について証明が十分ではないという理由から、名誉毀損の一要件である「公然性」を欠き、小野氏の発言によって「社会的評価を低下させた」とまでは言えないとしたのが今回の判断です。つまり、小野氏の発言は、それが文部科学省での会見のような公の場でなされていれば十分に名誉毀損を構成する内容であるということです。本裁判では、小野氏の発言が真実であったという点については何ら証明がされていません。小野氏の発言が真実でないだけなく、合理的な根拠に基づかない、いい加減なものであったことは、別事件の裁判でいずれ明らかになることです。理事会の公然性の要件も充足するものと考えておりましたので、この点については今後の対応を 代理人弁護士とよく相談したいと思っております。しかしたとえ人数の限られた理事会であっても人格を傷つけるような発言をしてはいけないという判決が下ったのです。

 小野氏は自分の裁判費用を大学に負担させているばかりか、大学のホームページを使って自身が被告になっている敗訴判決をあたかも自分(たち、大学)の勝訴であるように、しかも判決内容をミスリードする形で学内外に広めています。

 城西大学を自分の保身のためにやりたいように使うこうした小野氏のやり方に、城西を愛する者として大変憂慮しています。 私は、城西大学、城西国際大学が建学の精神を継承し自由で独自の教育ができる私立大学であり続けるよう願っています。

 建学の精神に基づき、城西の個性を発揮できた様々な教育プログラムが文科省元官僚の小野氏によって次々に破壊されています。私の教え子や私と一緒に女性学に取り組んでいた教員の一部が大学を追われる事態が引き起こされました。

 デタラメ経営と小野氏が罵倒した私の経営の下では、少なくとも、城西で学びたい者には門戸を広げ、城西での研究・教育の自由を否定したことはありません。文科省の天下り官僚により城西が建学の精神を失った平凡な私立大学にされていく事態を黙って見てはいられません。

 伸び代を多く蓄えた城西大学、城西国際大学の先生方、職員、そして学生が、のびのびと勉学・教育・研究・イノベーションに全身全霊で当たっていける大学でなければ、建学の精神は守られているとは言えません。建学の精神を守るため、城西の正常化を目指し私は闘い続けるつもりです。今回の勝訴判決はその第一歩です。

 皆様の変わらぬご支援と励ましに心からお礼を申し上げます。


2018年9月18日

水田宗子








水田宗子さんが勝訴!

―― 元文部科学省事務次官小野元之氏に損害賠償命令 ――


 2018年9月12日、東京地方裁判所にて、2016年11月30日に開かれた学校法人城西大学理事会における小野元之氏(元文科省事務次官)の発言をめぐり、水田宗子さんが小野氏に対して提訴した損害賠償請求訴訟の判決が言い渡されました。


 法廷は小野氏の水田さんに対する侮辱を不法行為として認め、小野氏に損害賠償を命じました。


 当該の理事会で小野氏は、水田さんの解任動議を提案するにあたり、水田さんを「認知症」と推測したり、「セクハラ」行為を行っていたなどの内容の発言を繰り広げました。それらが不法行為として認められたものです。


 以下は、水田宗子さん代理人の大室俊三氏のコメントです。


「理事長解任動議の際解任すべき理由として述べた発言を違法であると裁判所が認めた意義は大きい。このような発言に引きずられてなされた決議、違法な発言を放置しただけでなく発言した小野氏を理事長代理に選任した理事たちの責任を、今の理事たちはどのように考えるのか、今後問題にしたい」


 現在、水田さんは学校法人城西大学や、学校法人城西大学法人事務局長(元文科省官僚・北村幸久氏)に対しても提訴を行っています。数ある訴訟のうち、判決が出たのは今回が初めてです。水田さんが退任を迫られた問題の理事会で、違法性のある発言が行われていたことが司法によって認められた画期的な判決です。なお、より詳しい内容については追ってお知らせいたします。

 皆様ご支援ありがとうございました。今後も複数の訴訟の審理が続きます。ひきつづきよろしくお願い申し上げます。


水田宗子さんを支援する会一同












城西問題の解決を訴える

――小野元之氏の欺瞞と大学の私物化――

                              

2018年6月25日

                           学校法人城西大学 前理事長

                                水 田 宗 子

1 会計調査委員会の最終報告について

 5月31日、学校法人城西大学は、会計調査委員会の最終報告書の受領を公表し、新たなに1億円を超える不適切支出が明らかになった旨を発表しました。

 私は、昨年4月19日、会計調査委員会が設置された当時、同法人の理事でした。設置の発表に先立つ2月、3月の理事会では、会計調査委員会の設置や文科省における会見など一切議論されたことがなかったので、私は報道に驚きました。私は、同委員会に対して、その設置手続の瑕疵、委員や事務局の人選の不透明さ・不公平さについて意見し、説明を求めてきましたが、残念ながら、同委員会はその点について回答することから逃げ続け、現在に至ります。

 同委員会は、昨年9月の中間報告及び今回の最終報告いずれにおいても、退職金等の支払いについて必要な理事会決議を欠いているという理由で「不適切な支出」と結論づけています。学校法人城西大学の公表内容を聞く多くの人は、理事長である私が必要な決議をとらずに勝手に退職金額等を定めて支給していたと誤解するでしょう。

 しかし、それは全く事実と異なります。同委員会が問題とする退職金等の支給について常務会(または常務理事会)の決議を経ていました。退職金等の支給とその額の決定について理事会から包括的に委任された常務会(または常務理事会)の決議で足りるとするのが学校法人の城西大学の規程の内容だったのです。

 常務会(または常務理事会)に包括的に委任することは許されず、個別具体的な退職金等の支給決定に理事会決議が必要であるとするのは委員会の独自の見解です。法律上必ずしも必要とされない理事会決議が必要であるという独自の見解まで披露し、不適切会計との結論を出したのです。

 報告書では「理事会決議」が非常に強調されていますが、そもそも会計調査委員会の設置について理事会決議が存在しません。その存立の基礎を支える正当性すら欠けた委員会なのです。それだけでなく、ヒアリングの過程において、委員会の人選、調査方法の客観性・公平性などについて私から具体的に疑義を指摘されながら、4人の委員誰一人として誠実な回答をしなかったことに、同委員会の本質を見ることができます。その事実認定、法令・規則の解釈の客観性・公平性に疑義があることは明白です。

 小野元之理事(以下「小野理事」といいます。)及び学校法人城西大学は、私との裁判において、会計調査委員会の中間報告書及び最終報告書を自らの主張を根拠づける証拠として提出しています。いずれ、その恣意的な法令解釈と事実認定が不適切なものであることが裁判において明らかになります。

 小野理事は、私の経営が「デタラメ経営」であると新聞紙上で威勢よく非難をされていましたが、解任当時はもちろん借金はなく、資産1200億円・流動資金490億であり、収益は年間14~20億円でした。これまで一度も給与、ボーナスの遅配もありません。給与も他の私立大学と比較しても適切に決められていました。役員に関しても同様です。

 現に小野理事も同理事の後輩で文科省OBの北村幸久氏(現在法人局長)も約1800万円、約1500万円という高額報酬を受領していました。つまり、学校法人城西大学は、小野理事が高額の理事報酬を得られるだけのよい経営状態を維持していました。私を解任した後も、現在の理事会は、私が全学的委員会を設置して2011年に設定し、実行した第一次5カ年中期目標・計画、それを引き継ぎ発展させた2016年に策定した第2次5か年目標・計画をほとんど変更していません。小野理事自身がその策定・実行のプロセスに参加し、賛成しているのですから当然です。

 私の経営が「デタラメ経営」なのであれば、この計画こそ、その元凶のはずです。それを変更していないという事実だけでも、小野理事による「デタラメ経営」なる非難が内容空虚な言葉遊びに過ぎないことはお分かりいただけると思います。

 小野理事やその強い意向を受けて設置され、小野氏と個人的な関係の深い委員によって構成された会計調査委員会の報告書は印象操作としては十分に機能したと思いますが、いずれも裁判において覆されるものです。残念ながら今しばらく時間を要しますが、一つ一つ勝訴判決を重ねていきたいと思います。

 なお、現理事長の上原明氏(以下「上原氏」といいます。)は、コンプライアンスの徹底を謳いながら、今回の記者会見にさえ自ら臨まず、「理事長特別補佐」の小野理事に委ねる無責任な姿勢で徹底しています。上原氏は、小野理事の行ってきた違法ないし不適切な行為を一切不問に付すばかりか、会計調査委員会が理事会で一切議論されないまま設置された重大な瑕疵についても説明していません。上原氏にコンプライアンスを語る資格はないと思います。

 残念ながら現在の学校法人城西大学に小野理事(理事長特別補佐)の行った行為を問題とする自浄能力は期待できないので、私は、小野理事の行為を検証対象とする第三者委員会の設置をはじめ、次に述べる城西問題について徹底的な検証を求めていくつもりです。


2 城西問題の本質

 いわゆる森友問題や加計問題は、「政治が行政を歪めた」という視点から取り上げられてきました。その言葉になぞらえれば、学校法人城西大学では、「文科省のOBが大学の自治を歪めた」ということができます。この問題の本質が不適切会計などという作り出された不祥事にあるのではなく、元文部科学省事務次官である小野理事が、当時行われていた学校運営調査があくまで任意調査であることを知りながら、文科省が学校法人城西大学に厳しい目を向けている、このままでは補助金が削減される、最悪の場合には法人が解散されるなどと、法律上あり得ない危機感を煽りました。

 そして、そこに何ら回避すべき危機がないにも関わらず、理事長である私を解任しなければ学校法人の危機であるとして、緊急動議という違法な手段を講じました。それだけではありません。小野理事は、寄附行為に定められた手続によらず自ら理事長代理を称し、事実上理事長として10か月以上、学校法人城西大学に君臨しました。

 寄附行為は私立大学のいわば憲法です。元文科省事務次官であり、私立学校法の解説書の著者でもある人物が、寄附行為の規定には従わず、私の解任に賛成した理事らの多数決で理事長代理と称し続けたのです。

 これは、元文部科学事務次官による私立学校の根本規範の破壊行為です。学校法人城西大学の寄附行為は、多数決を濫用するかかる人物が出てくることを想定し、理事長代理はあらかじめ定められた者が就任する旨を明記していました。

 当然のことながら、学校法人城西大学の長い歴史において、寄附行為を無視し、多数決で理事長代理になった者は存在しません。小野理事の行為は、学校法人城西大学の根本規範(寄附行為)に対する冒涜であり、会計調査委員会の言葉を借りれば、明らかに遵法意識・倫理観が欠如する不適切な行為です。

 また、小野理事は緊急動議の違法の問題を覆い隠すため、「不適切」会計の問題に焦点を当て印象操作を繰り返す一方、あれだけ強調していた「文科省の意向」について、昨年の2月に天下り問題が世間で騒がれ始めた時期を契機に突如として口をつぐむようになっております。

 小野理事が私の経営では数年後には法人経営が破綻すると思うのであれば、それを理事会に上程し、正々堂々と私の経営方針について問題提起し、必要だと思うのであれば、寄附行為に規定に従って私の解任決議を提出すれば足りることです。しかし、彼がしたのはアンフェアな不意打ちである緊急動議です。百歩譲ってそれが認められるとしても、それは、文字通り「緊急性」があった場合に限られるはずです。

 小野理事は当時それを「文科省の調査と意向」に求め、自らの主張の正当性を根拠づけていましたが、解任が一旦成功するや文科省の意向に一切言及しなくなり、これまで、小野理事からその緊急性の存在、文科省の意向なりが証明されたことがありません。それどころか、補助金カットだ、大学の解散の危機だと騒いだ文科省の任意調査の結果を公表すらしていません。あまりに自らの言動に無責任かつ卑怯で姑息な態度だと憤りを感じます。

 学校運営調査はあくまで「任意」の調査です。その調査の過程において、文科省が私立大学に対する補助金の削減・停止をちらつかせ、その意向を私立大学に及ぼそうとしたのであれば、権力の濫用であり、大学の自治を揺るがす大問題です。

 当時、小野理事は文科省の意向に明確に言及し、緊急動議という違法な手段を講じて私立大学の理事長を解任し、自らが事実上理事長の座につきました。任意調査における文科省の意向を理由に私立大学の理事長の解任をするなど、私立学校法が尊重する私立学校の自主性を踏みにじり、大学の自治を侵害するものです。

 信じがたいことですが、文科省元事務次官という経歴を有し文部科学行政に通じた小野理事が、出身母体である文科省による任意調査を利用してこれを実現したのです。元文科省事務次官による大学の自治の破壊、これこそが学校法人城西大学で起こっている問題の本質です。

 これは一私立大学の問題ではなく、まさに全私立大学の自治の問題であることを多くの私立大学関係者にぜひ知っていただきたい。私が闘い続ける理由の一つはここにあります。小野理事の都合で設置された会計調査委員会が小野理事に都合のよい「不適切会計」との結論を出し、今や、問題の本質がすり替えられようとしています。

 同委員会の最終報告を受け、私は、文科省の調査を利用した文科省元事務次官による私立大学理事長の追い落としこそが、この問題の本質であることを改めて強調したいと思います。

 学校法人城西大学の元監事、私の解任に反対した元理事など、小野理事のやり方に反対した方々は大学に対する貢献者でありながら、大学を追われました。その後、私が大学を私物化したと批判する小野理事は、自らが理事長を務める学校経理研究会の元副理事長(現在顧問)、旧知の元総務省事務次官、自らが評議員を務める東北大学の総長経験者、京都大学法学部の同窓である元裁判官を次々に法人の役員(理事、監事)に迎えました。さらに、自らが理事長を務めるパナソニック財団の元事務局長を総務部長として迎えています。

 そして、理事長になるつもりはないと述べながら、理事長代理と称して10か月もの間、理事長同然に振舞った後、理事長「代理」から理事長「特別補佐」へとなりました。ありもしない緊急性を元文科省事務次官が「文科省の意向」という言葉で生み出し、1年もたたず、学校法人の理事・監事ポスト等を自らの旧知の人物の再就職先としてしまいました。

 身近な友人や部下で理事、監事、事務局管理職を固めただけでありません。私の解任に反対した理事、監事を退任させ、私を支援する教職員を排除し、さらには私を始め排除された教員の元で勉強、研究していた学生たちまでも排除してしまいました。こんな強権発動は決して許されてはならないと思います。

 創立者の娘が学校を私物化したといえば、事実とは無関係に多くの人がイメージを膨らませるであろうことは想像できますが、私は、小野氏のような私的な関係で人事を決めたことは一切ありませんし、私の意見に反対するという理由で人を排除したこともありません。以上のとおり、小野氏のいう「デタラメ経営」も「学校の私物化」も印象操作のための発言であり、そこに具体的な中身などないのです。

 このような人物を理事に推薦した私自身の責任を感じています。事が私自身の解任だけであれば、私の自業自得かもしれません。自らの経営について反省する点もあります。

 しかし、前述のとおり、私立大学の経営に携わったこともなく、創立者の精神を体現すると思えない人物らが元文科事務次官の知り合いであるというだけで次々と理事・監事となり、学校法人城西大学が私立大学としての自主性を失おうとしている事態を私は見過ごすことはできません。

 小野理事の行為が私立大学の自治を揺るがす由々しき事態であることを明らかにし、学校法人城西大学の正常化に努めて参ります。当時、仮に文科省に小野理事が言われるような(私を解任させる)意向があり、それを小野理事に伝えていたというのであれば、任意調査の名を借りた権力の濫用であり、文科省の責任も追及していく所存です。

 私は大室俊三弁護士から力強い援護を受けており、今後の裁判に一切不安を感じていません。しかしながら、私の究極的な目的は、裁判に勝つことにとどまらず、小野理事によって歪められた学校法人城西大学の自治を取り戻すことです。もちろん、そのための具体的な構想も持っています。今後、協力者の方々のご協力を得て実現して参ります。

 小野元之理事長特別補佐による記者会見を受け、以上のとおり私の意思を改めて皆様にお伝えいたします。

以上







2018年5月31日 学校法人城西大学による記者会見に対する

水田宗子氏弁護士の反論コメント


            会計調査委員会の最終報告書について

                                弁護士 大室俊三

本日,学校法人城西大学会計調査委員会が作成したという最終報告書の要約版などが公表されました。

これは初めて目にするもので十分な検討はできてはいませんが、本人の意向を代弁しつつ、弁護士としてのコメントを述べることとします。なお、本コメントについてはご本人の同意を得ております。

会計調査委員会の設立及びその委員の選任は理事会の議を経ておらず,そもそもその会計調査委員会の正当性自体重大な懸念があるところ,今回の最終報告書では,「会計」にとどまらず,名誉毀損で告訴しなかったことなどまで問題にしており,いかなる権限があってこれができるのか疑問です。

又,第1回の報告書は,本来尋ねるべき人に対するヒヤリングを全くしようともせずに結論を出し学校法人はこれを公表しました。なすべき調査がなされていないとの批判されるやアリバイのように事情聴取の要請を公表後にあわててしたものの対象から拒否されるなど,会計調査委員会の事実調査には,目覆うべき不備が既に明らかになっています。今回の報告書がこれを踏まえてなされたとも思えず,この点からも報告の妥当性は限られていると言わざるを得ません。

また,指摘内容についても,一読した限りでも明らかな不合理があります。今回の最終報告書で金額のうえで最も大きな問題は水田前理事長の退職金を退職前に支給していたとの点ですが,これは水田前理事長が理事長になる以前からの慣行に従っただけでなく,常務理事会での議を経ているものです。70歳を超えて学長を務めた人について,70歳の時点で退職金を支給した例は,現在の理事を含め複数存在するのであり,ことさら水田前理事長に対して特段の優遇策をとったものでもありません。そもそもこの措置は,勤続年数に比例する退職金の高額化を防ぐため,70歳以降の勤務を退職金に反映させないための処置です。この処理については,学校法人の会計監査に当たる公認会計士からも問題だとの指摘は受けておらず,また決算は,現在の理事長も理事であった理事会でも承認されてきた取扱です。水田前理事長についてこれを問題視する現理事会の厚顔さにはあきれるばかりです

その他の報告書の問題点は多々感じますが,ご本人と協議ができていない段階でのコメントとしてはこの程度とします。

一言でまとめれば,会計調査委員会の「会計最終報告」は,調査委員会設立及び委員選定の正当性,事実調査の手法,報告内容のいずれの点からも極めて遺憾であり,水田前理事長の訴訟代理人として本件について関与してきた弁護士として,到底指摘の妥当性を認めることはできません。


Comment on the Final Report of the “Accounting Investigation Committee”

By Attorney Shunzo Ohmuro


Today, a summary version of the final report made by the Josai University Educational Corporation Accounting Investigation Committee was made public. This was the first time I had the opportunity to read the report, and although I would like to have more time to review its contents, I have decided to give my initial comments as a lawyer representing the interests of my client.

As the establishment and selection of members of the Accounting Investigation Committee did not follow the due process of the Board of Directors, there are grave concerns about the very legitimacy of the committee itself. Furthermore, this final report goes beyond matters of “accounting” to raise issues not addressed in the defamation suit, and it is questionable under what authority the committee does so.

In addition, the committee’s first report put forth its conclusions, which the university publicized, without any attempt to conduct hearings with the appropriate people. Facing criticism that the report lacks the basic and necessary investigations upon which to base its conclusions, the committee hastily asked around to make hearing appointments after the release of their first report, as if creating an alibi, but its requests were refused. Such blatant deficiencies in the committee’s investigation processes have already come to light. This current report does not seem to have resolved such basic deficiencies, and I cannot help but say that this final report has very limited validity.

As to the content of the report, even at first glance it is clearly untenable. For example, one of the main issues raised by this final report concerns the claim that the retirement payment to the previous Chancellor was paid before her retirement. However, this not only followed the established process that had been regular procedure even before Dr. Mizuta became Chancellor of the university, but it had also been officially discussed and approved by the Executive Board. There are multiple examples, including among current board members, of past university presidents who served beyond age 70 and who were paid retirement funds when they reached the age of 70. In no way was this a specially favored treatment for the previous chancellor. To begin with, this practice was devised to prevent a huge increase in retirement payment for those who continue to work beyond age 70 by not having the work years beyond 70 reflected in the retirement fee amount. This procedure had not been pointed out as problematic by the university’s financial auditors (who are all certified CPAs), and the account settlement was approved by the current chancellor, Mr. Uehara, who was a member of the board at the time. It is simply astonishing that the current University Board of Directors would make such shameless accusations against Dr. Mizuta.

There are many more problems that I find in this report. At this juncture, I will only summarize by saying that as an attorney for Dr. Mizuta, I reject the validity of this final report in all respects, including the lack of legitimacy in the committee’s formation and selection of members, as well as the extreme deficiencies in its methods of investigation and its findings.

水田先生が代表である国際メディア・女性文化研究所の新刊情報


水田宗子理事長が代表する国際メディア・女性文化研究所の設立を記念して、「21世紀に求められる人文科学と大学教育ー―大学改革と人間形成ー―」と題するシンポジウムが開催

され、その記録集(Symposium Proceedings)が2020年8月25日に発行されました。

水田宗子(国際メディア・女性文化研究所所長、学校法人城西大学理事、同前理事長)による開会挨拶の後、パネリストによる講演と、討論が行われた。

パネリストとして、巽孝之氏(慶応義塾大学教授・日本アメリカ文学会第16代会長)、芦辺拓氏(作家・日本推理作家協会)、荒木勝氏(岡山大学前副学長・同大学名誉教授)、上野千鶴子氏(元東京大学教授・同大学名誉教授、NPO法人WAN理事長)、中沢けい氏(作家・法政大学教授)、阿木津英氏(歌人・短歌結社「八雁」編集発行人)が、以下のタイトルで講演をされた。

巽孝之先生:人文学の通義 その生命、自由、幸福の探求について

芦辺拓先生:仕事をさぼってツィッターやってて見えてきたこと

荒木勝先生:人文科学と大学教育ーー大学改革と人間形成 シンポジウムへの提言

上野千鶴子先生:人文科学はなぜ必要か

中沢けい先生:フェイクニュースの時代を考える

阿木津英先生:無用無益のゆたかさと近代精神

司会者:

土居征夫(元経済産業省生活産業局長、学校法人城西大学前イノベーション・センター所長、一般社団法人 世界のための日本のこころセンター代表理事)

和智綏子(国際メディア・女性文化研究所副所長・城西国際大学客員教授)

北田幸恵(国際メディア・女性文化研究所副所長・城西国際大学客員教授)

              * 開催時の所属による

2018年4月14日(土)午後1時~午後5時

日本女子大学 新泉山館 一階大会議室


記録集購入ご希望の方は、以下のメールアドレスまでご連絡下さい。

  iimws1222@gmail.com


Oxford University holds a symposium celebrating Chancellor Noriko Mizuta’s work
6月17-8日に水田宗子理事長は英国オックスフォード大学ペンブロークカレッジのローレンス・マン教授とリンダ・フローレス教授の招きにより、水田宗子先生の業績を讃える国際学会での基調講演と、それに続き翻訳に関する学会において、英語に翻訳されたご自身の詩を朗読され、また、その後の翻訳に関する国際学シンポジウムに参加された。
Oxford University Pembroke College held an international conference Celebrating the work of Chancellor Noriko Mizuta, in which Prof. Mizuta gave the key-note speech on the June 17-18, 2019 International conference titled “Poetry, Translation, Education: Celebrating the Work of Professor Noriko Mizuta.” Chancellor Mizuta recited some of her poems in Japanese and then they were translated into English by the students of Japanology, Japanese Literature, and Japanese language of several colleges of the Oxford University. The conference was organized by Prof. Laurence Mann and Prof. Linda Flores, Pembroke College & Faculty of Oriental Studies, University of Oxford, England
今回の学会は英国オックスフォード大学ペンブローク・カレッジ(17世紀にペンブローク伯爵によって創設された、おックすフォーd大学でも3番目に古いカレッジである)を会場として、「詩、翻訳、教育:水田宗子教授の業績を讃えて
Poetry, translation, education: A celebration of the work of Prof. Noriko Mizuta」と題して水田宗子理事長の業績を讃える日本学のシンポジウムがオックスフォード大学により開催されたものである。
オックスフォード大学は、英国の歴代首相の半数を排出している名門校であり、9世紀から10世紀にかけて形成された
由緒ある街で、大学には40以上のカレッジを有する、まさに街そのものが最高学府を形成している環境そのものである。今回の水田宗子先生の業績を讃えるシンポジウムは、数あるカレッジの中でも
古い歴史を持つペンブローク・カレッジのキャンパスで開催され、参加者も、オックスフォード大学の幾つかのカレッジや、ロンドン大学オリエント・アフリカ研究校(School of Oriental and African Studies, 略してSOAS, London University),アメリカのエモリー大学(アトランタ、ジョージア州)、韓国、日本など世界から多様な学者が参集していたのが印象的だった。
開会あいさつはペンブロークカレッジのマスターと呼ばれるリン・ブリンドリー学長(Dameというknightに叙せられた女性という敬称 )の称号を持つMasterで、Master という職位は学長と説明されました)
総合司会は、オックスフォード大学ペンブロークカレッジのフェロー(評議員)であるリンダ・フローレス教授。(日本に留学した時は、水田宗子先生を論文指導教員として学ばれた方である)
第一部はアメリカのエモリー大学のジュリア・ブロック教授による、水田先生の業績の顕彰し、いかに水田先生がつとに日本女性作家の作品を多数英語に翻訳されたことが、それを若い頃から読んだ自分を含む人びとの中から、いかに多くの日本文学、日本学を志す学者研究者学生が育成されてきたかを示された。
それに続き、水田先生によるキィノートスピーチ「山姥の翻訳」によって、比較文学、文学批評に最先端の道を切り拓かれてきたご自身の経験を話された。大庭みな子、林芙美子、富岡多恵子、円地文子、白石かず子などの日本女性作家たちだけでなく、英米のエドガー・アラン・ポオやシルヴィア・プラス、ヴァージニア・ウルフなど、比較文学、フェミニズム批評の深い学問に根ざした講演をされた。世界中から参集した学者、研究者、また
学生たちは、長い間、先生の作品を学んできた今、こうして直接水田先生から講義を聞く感激に目を輝かせて聞き入っていたのが印象的だった。
第二部は、オックスフォード大学ローレンス・マン教授による司会で、マン教授は、この学会をリンダ・フローレス教授と一緒に企画運営された方で、この学会に向けて、何年間も日本学を学ぶオックスフォード大学の学生たちによる水田先生の詩の英語訳のワークショップや授業を指導されたのである。
第二部の研究発表の最初は、ロンドン大学SOASオリエントアフリカ研究校
のハンナ・オズボーン教授による「水田宗子から金井美恵子へ:テキストを読み翻訳すること」と題する非常に緻密な
そして、新しい視点からの研究発表がなされた。
次に、水田先生によるご自身の三篇の詩の朗読がされた。
これらの詩は、オックスフォード大学の日本学、日本文学、日本語学を学ぶ学生たちが選んで、ワークショップによる体験型学習プログラムで英語訳に挑戦した詩である。学生たちは一言も聞き漏らすまいと、水田先生の朗読に耳を澄ませて聞いていた。その後で、学生たちによる、それらの詩の英語訳が英語で読まれた。参集した学者研究者たちからは、大変良い
翻訳だと、お褒めの言葉が表明され、また、質疑応答が活発になされた。体験型のワークショップの学びは、学生たちに深い印象を与えたことであろう。ここから次世代の日本研究者が育つことが期待できると確信した次第である。
会場には、水田先生による著書が展示され、参加者たちは、親しく手に取って、目を通し、中には「買いたい」という希望を述べる人もいた。水田先生は、学会をオーガナイズされたフローレス教授とマン教授に御自分の著書を贈呈してこられた。きっと今後の研究や授業で役に立てられることであろう。先生がたや学生たちには大変に喜ばれた。
文責:和智綏子
この学会のプログラムとワークショップで朗読された学生たちによる水田宗子先生の詩の英語訳の例を以下に記す。
3rd TANAKA SYMPOSIUM IN JAPANESE STUDIES
Poetry, translation, education: A celebration of the work of Prof. Noriko Mizuta (in memoriam Dr Kenji Tanaka)
Pembroke College, University of Oxford
17th June 2019
The Tanaka Symposium in Japanese Studies, titled “Poetry, translation, education: A celebration of the work of Prof. Noriko Mizuta”, took place on 17th June 2019 at Pembroke College and the University of Oxford as an exciting event.
Registration
Registration opened at 9.45 in the Harold Lee Room, located on the upper level of Rokos Quad, which is accessed via a bridge, at the far end (left) of Chapel Quad.
Keynote Lectures
We are pleased to announce that the keynote lecture was given by Noriko Mizuta.
Lunch for presenters was served in the Main Hall, Chapel Quad, from 12:30 to 13:30.
After the symposium, at 17:15, participants took a private tour of the Pembroke Art Gallery. More information on the Gallery can be found at: http://www.pembrokejcrart.org/
A drinks reception was held in the Auditorium Foyer after the end of the symposium, from 18:00 to 18:45. Dinner was served thereafter in the Forte Room, next to the main dining Hall in Chapel Quad.
Directions
Pembroke College is located on Pembroke Square just off St Aldate’s in central Oxford.
Oxford has excellent road and rail links, and is not far from major airports. Pembroke is in the centre of the city, with public transport terminals nearby. There is a regular and reliable direct bus service from Heathrow and Gatwick airports to central Oxford, called ‘The Airline’.
https://airline.oxfordbus.co.uk
http://www.admin.ox.ac.uk/access/colleges/pembroke/
You can find a map of the College here:
http://www.pmb.ox.ac.uk/sites/default/files/library/Documents/Conferences/college_map_hs-firepoints.pdf
Maps and information on how to reach Oxford, and Pembroke College:
http://www.pmb.ox.ac.uk/sites/default/files/how_to_find_us_map.pdf
The conference venue
Information and pictures of the Pichette Auditorium and other facilities at Pembroke can be found here:
http://conference-oxford.com/venues/conference/pembroke-college
For general information on the College and contacts, please see:
http://www.pmb.ox.ac.uk/
オックスフォード大学学生たちによる水田宗子の詩の英語訳
「草原の回復」
Recovery in the grass fields
After a prolonged child birth
I lay down upon the grass fields
That moisture
It does not wet my skin
It flows from me
It surrounds me
And then, it ignores me
Forbidden indulgence
I was denied recovery through water
After the end
The wind starts blowing in the grass fields
I cradle grass with my dry skin
Just like a saint
While wiping my cracked lips
I chew on the grass
Words haven’t come back to life yet
There hasn’t been a visible sign of recovery but
On his new bed without bloodstains
In dry grass fields
Just like a rabbit
in silence
I live
still
It is my vision, looking into the distance
Which draws on water
And it becomes hazy.
Translated by Barbara Mikulášová, a student of Japanese Studies at the University of Oxford.
この詩を英訳したのは、オックスフォード大学で日本学を学ぶ学部生のバーバラ・ミクラショヴァです。将来はこの詩を父親の祖国であるスロヴァキアの言語に翻訳したいという夢を持っています。
深い眠りがあったら – If You Sleep Deeply
If you sleep deeply,
Something will surely awaken.
Just as when the seasons change,
The meadow grasses bear buds. 
If you take a train,
A single parting glance
toward all that you leave behind
Is enough.
A man standing
Frozen
On a river bank;
Young siblings
Holding hands
At a railway crossing.
Everything is a fleeting farewell.
It passes by at such speed that
it cannot be regained
no matter how fast I run.
To drift off to sleep
is to be within a deep cylinder.
Circling,
Slipping.
No matter how far it goes
It isn’t enough.
Descent
Endless temptation
Even if you embrace the abyss
You will never reach
the source of the wound
The desire on which
Awakening relies.
To drift off to sleep
is to be within a reverberation
A deep chasm of illusion
Repeating only nothingness
From the depths of the fog
Ever returning
The sound of silence
Echoes of eternity.
詩はまっていてくれると – Poetry Is Waiting For Me
Poetry is waiting for me;
is the soul that T.S Eliot spoke of
waiting for me, I wonder?
Lurking in a thicket
or laying in a meadow:
For me to catch up with.
Or,
Will it ambush me?
Lying in wait someplace,
As if it might slit my throat
to test its strength.
Am I waiting too, I wonder?
If I walk around town like this:
Aimless, a drifter
just passing the time,
Will I meet it by chance?
Closing in on me
from the beyond.
If I pass through
a foreign country,
Calling out to stop me
suddenly
from behind.
In the ancient ruins
visited by tourists,
Will it be basking
on the bare earth?
Like the space
that I watched intently,
Born of an explosion,
and sucked into a black hole
before disappearing altogether,
Will the days
in my memory, too,
be sucked into
a single spot upon the earth?
To see for myself:
The leaves and ashes
whirling in this garden,
Entrusted with something
like a soul,
Fly away,
Little by little.
No matter how far I chase them
I can never catch up.
Like the story of a journey
with destination indeterminate,
Waits for a poet
that materializes,
someplace;
Truly, poetry is waiting for me.
Melissa Jane Lewis is an undergraduate student of Japanese at the University of Oxford, Hartford College. She is currently writing a dissertation on presentation of gender and youth identity in Japanese video games. (メリッサ・ジェイン・ルイスはオックスフォード大学ハートフォード・カレッジの日本語専攻の学部生であり、現在、日本のビデオ・ゲームにおけるジェンダーと若者のアイデンティティの分析で卒業論文を執筆中です。)